ゲームのあとの祭り

サッカーの試合を観て思ったことを書きます。

生き残る方法

その瞬間、頭が真っ白になった。


2日前のJ1リーグ第27節、セレッソ大阪戦の試合終了直前、1-0でリードしていたベルマーレはラストワンプレーでソウザに同点ゴールを決められて、勝ち点“2”を失う結果に終わってしまった。


ただでさえカオス(混沌)と化しているJ1リーグ、残留争いに限ってみれば、8位の浦和(勝ち点38)から最下位の長崎(勝ち点27)までの勝ち点差は11しか開いていない。


ちなみに、長崎が挙げた勝ち点27というのは、現在の34試合制になって以降、J1で16位でシーズンを終えたクラブの最高勝ち点と同じ。

ちなみ、その歴代最高の16位のチームこそ、2008シーズンの最終節で“奇跡の残留”をやってのけたジェフ千葉。

そこから現在に至るまでの経緯は、ジェフサポの心を汲み取って割愛する(笑)


話が逸れたが、ベルマーレの話。

直近のリーグ戦2試合(鹿島、セレッソ)に共通しているのは、試合終了間際に失点を喫していること。

失点の仕方や原因に関しては置いておくとして、ここ最近の悩みの種が、チームに故障者が増えている、という事実。


セレッソ戦の前に載せられていた報道によれば9人の選手が別メニュー調整を行なっていたという。

シーズンが佳境に入ってきているから、蓄積された疲労もあるとは思うのだが、それにしても人数が多い。


これでは、J1に生き残るのにベストメンバーが組めなくて試合どころではない、と考える人たちも多かろう。


生き残る方法はある。

しかしそれは、その日、その週ごとに良い選手を使うとか、自分たちの強みをさらに出していく、とかではない。


答えはひとつ、チーム全体で“弱連結”の部分の質を高めることだ。


サッカー本大賞2015年度優秀作品にノミネートされた、『サッカー データ革命』という書籍にこんな一文が紹介されている。


「サッカーは“鎖の最も弱い部分”(弱連結)で成功が左右されるスポーツだ。個人のものであれ、集団のものであれ、ミスで試合が決まることが多い。」


手っ取り早く言うと、華麗なドリブルやパス、綺麗なシュートよりも、攻守において注意力を欠いたプレー、チームの連携の悪さの方が試合に与える影響が大きい、という解釈である。(個人的見解)


言われてみるとなるほど、と思うことだろう。

俗に言う強いチーム、弱いチームの最大の違いは得点が多い、失点が少ない、ということよりも、まずはミスを犯す頻度の差ではないか、と。


順位が上の方にいるチームは、個人でも集団でも自分たちの状況を悪くするようなミスはほとんどしない。

逆に順位が下に行くチームは、個人でも集団でも小さなミスを積み重ねることで、ますます負の連鎖に巻き込まれてしまう。


個人、集団の解釈はピッチ上の選手たちに限らず、ピッチ外に居る監督やスタッフにも当てはまる。

どんなに努力して頑張っていたとしてもアプローチが的外れだったら意味のないことであるし、それを続けていたら良い結果、という明るい未来を自分たちの不手際からどんどん手放していくようなものだ。


じゃあ、弱連結の部分を改善するには?


最近で言えば、ベルマーレはその答えを8月31日の長崎戦から見つけている。


その試合で見事なサイドの突破から梅崎司の先制点をアシストした石原広教、途中出場ながらプロ初ゴールを決めてからのわずか2週間で一気に中盤の主役に躍り出た金子大毅の2人の躍動だ。


石原、金子の2人は同学年の杉岡大暉、齊藤未月と比べると出場経験が浅く、チームの弱連結の部分に当てはめられている見方をされていた。

しかし、2人は重圧を跳ね除けて、自身の特徴を発揮して伸び伸びとプレーをしている。

弱連結の部分の質が高まり、チームに素晴らしい結果をもたらした。

その好循環がルヴァン杯22年ぶりの準決勝進出を決めた大きな要因とも言えるだろう。


敗れた鹿島戦でも中盤でスケールの大きなプレーを見せた金子が鹿島戦後別メニュー調整組に回ってしまったのは痛かったが、前述のセレッソ戦では途中出場の石原が思い切った攻め上がりで先制点に繋がるフリーキックを獲得し、フリーキックの流れから相手のボールをカットしてゴールの基点となったのはこの試合でJリーグデビューを飾った4人目の大卒ルーキー、山口和樹からだった。


155センチの小さな身体でエネルギッシュに動き回っていた山口は得点が入ってからも臆することなくセレッソの選手たちに向かっていき、終盤の決定機ではアシスト未遂となるプレーまで見せた。


ここでは金子、石原、山口のことを挙げたが(弱連結のくくりには鈴木国友、新井光も入る)、言ってしまえば杉岡、未月、山根、石川といった今では主力と呼ばれている選手たちも少し前までは弱連結の部分、と見なされていた選手たちだ。


そういう風に見られている分、質を高めていくのに時間はかかるし、多少の犠牲も伴う。


だが、良い選手を使えば必ず試合に勝てるのか、と言ったら必ずしもそうではない。


質が低い、と呼ばれている選手たちが、紆余曲折を経て質の高い選手たちに変貌していって、小さなミスが起こる頻度が減ったとしたら?


小さなミスが起こる頻度が減った分、今度は質の高いプレーを続けられたとしたら、そのチームにはどんな結果がもたらされることでしょう?


決めれる、決めれないの精度はあるにしても、モノにできる試合数は確実に増えていくはずなのだ。


ベルマーレに残された試合数は8。


川崎(2位)→磐田(11位)→鳥栖(16位)→札幌(7位)→清水(10位)→G大阪(17位)→浦和(8位)→名古屋(13位)という具合に、直接対決が多くなる日程になった。


ルヴァン杯も残っていてチームとしては踏ん張りどころではあるが、結果を残すこと、J1に生き残る方法において見逃されがちな“弱連結”の部分を改善していけば、二兎を捕らえることもひょっとしたら可能になるかもしれない。